そもそも、体の熱はどこで作られるのか
冷えを考えるには、まず「体の熱がどこで生まれているか」を知る必要があります。
私たちが1日に使うエネルギーの内訳を見ると、いちばん大きいのは、じっとしていても消費される基礎代謝で、全体の約60%を占めます(残りは食事による熱産生が約10%、体を動かす活動が約30%)。そして、この基礎代謝の大きさは、体格、とりわけ筋肉の量に大きく依存します(厚生労働省 e-ヘルスネット)。
さらに、体温を保つための「熱づくり」の主役も、骨格筋です。寒いときに体がブルッと震えるのは、筋肉を細かく動かして熱を生み出す「ふるえ熱産生」という反応。筋肉は、体を動かすためだけの器官ではなく、熱を生み出す「暖房器具」そのものなのです。
ということは、論理的にこう言えます。筋肉が少ない人は、熱を作る力(暖房の出力)が小さい。 そして、まさにこの点に、「なぜ女性に冷えが多いのか」の答えが隠れています。女性は男性に比べて、もともと筋肉量が少なく、体脂肪が多い。暖房の出力が小さいうえに、末梢まで熱を届けにくい。冷え性に悩む人に女性が多く、その割合は女性のおよそ半数にのぼるとされるのは、偶然ではないのです。
冷えている人の体で、実際に起きていること
「筋肉が少ないと冷えやすい」。これは理屈だけの話ではありません。実際に冷え症の人の体を測った研究があります。
若い健常女性を、足先と体の中心の温度差をもとに「冷え症群」と「非冷え症群」に分けて、体組成や自律神経を比べた研究です(獨協医科大学看護学部, 2020)。結果には、はっきりした部分と、正直に伝えるべき部分の両方があります。

※ 若年健常女性で、冷え症群と非冷え症群の足の親指の皮膚温を比較。冷え症群は平均26.5℃と、非冷え症群の32.5℃に比べて明らかに低かった(統計的に有意)。出典: 獨協医科大学看護学部, 2020(リンク)
はっきりしていたのは、足先(親指)の皮膚温です。冷え症群は平均26.5℃で、非冷え症群の32.5℃より、明らかに低いという結果でした。「冷えている」という自覚は、気のせいではなく、実際の温度としてそこにあったのです。
そして、冷え症群では筋肉量・基礎代謝・除脂肪量が、いずれも低めの傾向を示していました。ここは正直に言います。人数が少ない研究(18名)だったため、この筋肉量などの差は「統計的にはっきりした差」とまでは言えませんでした。それでも、方向性は一貫しています。研究者らは、骨格筋によるふるえ熱産生の低下と、自律神経の乱れによる末梢の血流不足が重なって、冷えを生んでいると考察しています。つまり冷えは、「熱が作れない」×「熱が届かない」の二重の問題なのです。
「筋トレで冷えが治る」とは言えない。でも、理にかなう
ここで、この記事のいちばん誠実であるべき部分に来ます。
これまでの話から、「じゃあ筋トレをすれば冷え性は治るんだ」と結論づけたくなります。でも、そう単純には言えません。「冷え性」はそもそも医学的な定義がはっきり定まっておらず、英語の病名すら確立していない概念です。原因も、筋肉量だけでなく、自律神経・ホルモン・血流・体脂肪・生活環境と多岐にわたります。そして、「筋力トレーニングで冷え性が改善する」ことを大規模に証明した、質の高い臨床試験は、まだ乏しいのが実情です。
だから、「筋トレは冷えの特効薬です」とは言いません。それは誇張です。
その一方で、筋肉が熱を生む主役であり、筋肉量が基礎代謝の大きな部分を決めている、という生理は確かです。前述の研究者らも、「筋肉量を増やす運動や、末梢の血流を高める働きかけが、冷えの予防・改善の一助になりうる」と述べています。特効薬ではないが、体の「熱を作る力」と「熱を巡らせる力」の両方に、運動は理にかなって働く。これが、誇張のない、正直な結論です。
| 冷えの要因 | 運動・筋肉との関係 |
|---|
| 熱を作る力(熱産生) | 筋肉が主役。筋肉量が増えるほど有利 |
| 熱を巡らせる力(末梢血流) | 動くことで血流が促され、末梢に届きやすくなる |
| 自律神経のバランス | 適度な運動・入浴・呼吸が整える方向に働く |
| 体格・体脂肪・環境 | 運動だけでは変えきれない部分もある(正直な限界) |
北浦和で、夏の冷房冷えから始める
冷えというと冬の悩みに聞こえますが、いまの季節こそ見落とせません。夏の「冷房冷え」です。外は猛暑でも、電車やオフィス、スーパー、家の中はキンキンに冷えている。薄着で長時間その環境にいると、足先やお腹が芯から冷え、だるさや肩こり、眠りの浅さにつながります。
できることは、シンプルです。まず、下半身の大きな筋肉(太もも・お尻・ふくらはぎ)を動かすこと。体の中で最も大きな「暖房器具」は下半身にあります。ここを鍛え、こまめに動かすことが、熱を作り、血を巡らせる近道です。加えて、冷房の効いた場所では一枚羽織る、湯船につかる、といった当たり前の対策も、ばかにできません。
RESIST北浦和店は、完全個室で、一人ひとりの体力に合わせて下半身を中心に無理なく鍛えていける環境です。「冷えは体質だから」とあきらめてきた方も、まずは体の暖房の出力を、少しずつ上げていく。それが、根本から冷えと向き合う、遠回りのようでいちばん確かな一歩です。
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筋肉が身体の土台である理由は筋肉は人体の基盤の記事で、40代からの筋肉と脂肪の入れ替わりは40代の体重増加の記事で解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 筋トレをすれば、冷え性は治りますか?
「治る」と言い切れる強い証拠は、残念ながらまだありません。冷え性は医学的な定義もはっきりせず、原因も筋肉量だけでなく自律神経や血流など多岐にわたるためです。ただし、筋肉は体の熱を生む主役であり、筋肉量を増やして動かすことは、「熱を作る力」と「巡らせる力」の両方に理にかなって働きます。特効薬ではないけれど、体質だとあきらめて何もしないよりは、確かな一手だと考えてください。
Q2. 冷えに効かせるには、どこを鍛えるのがいいですか?
体の中で最も大きな筋肉が集まる下半身(太もも・お尻・ふくらはぎ)が優先です。大きな筋肉ほど、動かしたときに生む熱も、消費するエネルギーも大きくなります。スクワットのような下半身の複合種目に加えて、ふくらはぎを使う動き(かかとの上げ下げなど)は、血液を心臓に押し戻すポンプとしても働き、末梢の血流を助けます。大きな筋肉を動かすことを、まず意識してみてください。
Q3. 運動以外に、冷え対策でできることはありますか?
あります。冷えは多因子なので、合わせ技が有効です。ぬるめの湯船にゆっくりつかって体の芯を温める、夏でも冷房の効いた場所では一枚羽織る、たんぱく質をしっかり摂って熱産生の材料と筋肉の材料を確保する、深い呼吸で自律神経を整える、などです。運動で「熱を作る土台」を底上げしつつ、こうした生活の工夫を重ねるのが、現実的で続けやすいアプローチです。
Q4. 冷えがひどく、しびれや強い痛みもあります。運動していいですか?
その場合は、まず医療機関の受診をおすすめします。この記事が対象にしているのは、はっきりした病気が背景にない「一般的な冷え」です。手足の強いしびれ、色が白や紫に変わる、強い痛みをともなうといった場合は、血管や神経、甲状腺などの病気が隠れている可能性があります。自己判断で運動を始める前に、医師に相談してください。診断のうえで問題がなければ、安心して体づくりに取り組めます。
参考文献
[1] 河野かおり ほか「熱産生の観点からみた冷え症の生理学的メカニズム:基礎代謝量および筋肉量を用いた検討」獨協医科大学看護学部紀要. 2020.(リンク)
[2] 厚生労働省 e-ヘルスネット「身体活動とエネルギー代謝」(kennet.mhlw.go.jp)
[3] 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(mhlw.go.jp)