結論:上げるのは普通に、下ろすのを3〜5秒かけて
研究で効果が確かめられているのは、持ち上げる動きはいつもどおりにして、下ろす動きだけを3〜5秒かけるやり方で、運動習慣のない人なら1日5分でも4週間で変化が出ています。
| あなたの状況 | 最初の一手 |
|---|
| 運動習慣がなく、始め方に迷う | 家で1日5分。下の4つを5秒かけて下ろす |
| ジムで筋トレをしている | 重さと回数はそのまま、下ろすのを3秒に |
| 駅や職場に階段がある | 下りだけ階段を使う |
| 散歩が日課 | 歩数は増やさず、下り坂や大きな一歩を混ぜる |
| 見た目が変わるほど筋肉をつけたい | 下ろし方に加えて、週のセット数も確保する |
家で始めるなら、下の4つから。オーストラリアの研究チームが、運動習慣のない人のために組んだ1日5分のメニューです。

※ Kirkら(2025年)の研究で使われた4種目をもとに作成。数字は、運動習慣のない32〜69歳の22人(うち女性18人)が4週間続けた結果。下半身の力は、太ももの高さに固定したバーを引き上げる力で測っています。
やり方は、どれも5秒かけて下ろし、1秒で戻すだけです。4種目を10回ずつ、まとめてやっても、1日のうちに分けても構いません。10回が2日続けて楽にできたら、図の「楽になったら」の形に替えます。
参加者は28日のうち平均91%の日をこなし、続いた理由に「短いこと」と「好きな時間にできること」を挙げました。メニューを8週間に延ばして10人を追った続きの研究では、伸び方はゆるやかになったものの、1年後も9割が何らかの運動を続けていました。
一方で、体重や体脂肪は4週間では変わっていません。体型を変えるメニューというより、動ける体と運動の習慣を取り戻す入口です。
エキセントリックとは?下ろすとき、筋肉は伸びながら働いている
筋肉の使い方には「持ち上げる」「止める」「下ろす」の3つがあり、伸ばされながらブレーキをかける下ろす動きは、同じ筋肉でも20%以上大きな力を出せます。
- 持ち上げる(コンセントリック)|縮みながら力を出す。ダンベルを上げる、椅子から立ち上がる、階段を上る
- 止める(アイソメトリック)|長さを変えずに踏ん張る。プランク、空気椅子
- 下ろす(エキセントリック)|伸ばされながら力を出す。ダンベルをゆっくり下ろす、椅子に座る、階段を下りる
しかも下ろす動きは、使うエネルギーが少なくて済みます。自転車型のマシンで、ふつうにペダルをこぐ運動と、モーターで逆に回るペダルを脚で押しとどめる運動(下ろす動きと同じ筋肉の使い方)を、同じ強さで30分ずつ比べた研究があります。押しとどめるほうが、心拍数も、酸素の使用量も、本人が感じるきつさも、そろって低くなりました。
息が上がりにくくラクに感じるのに、筋肉にはしっかり負荷がかかっている。同じきつさで比べれば、筋肉にかけられる負荷は下ろす動きのほうが大きくなります。頑張っている感覚と、筋肉が受け取る刺激の量。このずれに、頑張りすぎずに効かせる余地があります。
「1日3秒」は本当か|効いた回数の境目
腕を全力で3秒かけて下ろす動作を1日1回だけ行う実験では、週5日続けると4週間で筋力が1割以上伸び、週2日では伸びず、週2日なら1回に5回やれば伸びました。
「1日3秒の筋トレ」として話題になった、新潟医療福祉大学と野坂教授らの一連の研究です。最初の研究(2022年)では、運動習慣のない若い人を「下ろす」「持ち上げる」「止める」の3つのグループに分け、それぞれ1日1回3秒、週5日、4週間続けました。下ろすグループは、下ろす力・持ち上げる力・止める力の3つとも10〜13%伸びたのに対し、ほかの2つのグループで伸びたのは1つずつでした。
持ち上げる力でさえ、持ち上げる練習より、下ろす練習のほうで伸びたことになります。では、何日やれば足りるのか。続きの研究で回数と日数を変えた結果が下の図です。

※ 同じ研究チームが同じ方法で行った3つの研究(2022年・2024年・2026年)から作図。対象は20歳前後の若い人で、専用のマシンで測った持ち上げる力の変化。
1日1回なら週3日で少し伸び始め、週5日なら大きく伸びます。週2日しか時間が取れないなら、1回に5回まとめれば足り、このやり方では筋肉の厚みも5%ほど増えました。15回に増やしたグループも比べていますが、筋力の伸びは5回と変わっていません。
ただし、これらは専用のマシンで腕の力を全力で出した実験です。1日1回・週5日のやり方では、力は伸びても筋肉の厚みは変わらず、伸びたのは主に筋肉への指令の出し方(神経の働き)と考えられます。「3秒で筋肉がつく」とまでは言えませんが、ごく少ない量でも下ろす動きなら力は伸びることは、繰り返し確かめられています。
階段は下りを使う|心拍は低いのに、脚の力は2倍以上伸びた
60歳以上の肥満の女性30人が、階段を下りるだけ、または上るだけの運動を週2回・12週間続けた実験では、下りるほうが運動中の心拍は低いのに、脚の力も血圧も血糖もよく改善しました。

※ 台湾の研究チームと野坂教授の実験。15人ずつ2つのグループに分け、反対向きの移動にはエレベーターを使いました。脚の力は、膝を伸ばす力で測っています。
ほかの数字も、下りるグループのほうがよく動いています。安静時の心拍は10%、上の血圧は9%下がり(上るグループはどちらも4%)、骨密度は下りるグループでだけ6%増えました。中性脂肪やLDLコレステロール、血糖、HbA1cも、下りるほうが大きく改善しています。
このやり方は、そのまま日常に持ち込めます。駅でも職場でも、上りはエスカレーターやエレベーターに乗り、下りだけ階段を使えば、実験と同じ形です。実験でも、最初は少ない回数から始め、12週間かけて少しずつ増やしていました。

散歩の習慣がある人は、歩き方に下りを混ぜる手もあります。1日5,000歩以上歩いていた54〜88歳の11人を調べた日本の研究では、いつもどおりの散歩を4週間続けても脚の力は変わりませんでした。ところが、散歩にランジ(大きく踏み込む一歩)と下り階段・下り坂を混ぜた8週間で、膝を伸ばす力が19%、椅子から立ち上がれる回数が24%増え、バランスや認知機能のテストの成績も上がりました。1日の歩数は約1万歩のままです。歩くだけでは脚の筋力を保ちにくい理由は、歩くだけでは筋肉は守れない理由の記事にまとめています。
ただし、下りは膝の前に負担がかかりやすい動きです。膝に痛みがある人は手すりを持ってゆっくり下り、痛みが出るなら無理をしないでください(膝の痛みと運動の記事)。
下ろすだけでは足りないこと|研究が示す限界
下ろす動きにも限界があり、筋肉の大きさで比べると持ち上げる動きとの差ははっきりせず、ゆっくり動かすほど筋肉がつくわけでもないことが、複数の研究のまとめで示されています。
| 調べたこと | わかったこと |
|---|
| 下ろす練習と持ち上げる練習の筋肉の増え方(15研究・2017年) | 平均は10.0%と6.8%で下ろす側が上回ったが、差ははっきりしない |
| 下ろす練習と持ち上げる練習の筋力の伸び(20の試験・2009年) | 下ろす側が勝ったのは、より重い負荷を扱えたとき |
| マシンで下ろすだけ・上げるだけを続けた練習(27研究・2025年) | 下ろす力は27%対10%。持ち上げる力と止める力は、ほぼ同じだけ伸びた |
| 高齢者の、下ろす動きを中心にした筋トレ(11の試験・2026年) | 筋力は少しだけ上回る。体の機能や筋肉の大きさは同じくらい |
| 1回の動作にかける時間(8研究・2015年) | 0.5〜8秒なら筋肉のつき方は同じ。10秒を超えるゆっくりすぎは不利な可能性 |
個別の研究には大差がついたものもあります。器具を使わずに8週間鍛えた日本の高齢者17人の研究では、下ろす動き中心のグループの太ももの筋肉の厚みが22%増え、持ち上げる中心のグループ(7%)を大きく上回りました。ただ、研究をまとめると、その差は小さくなります。
下ろす動きの強みは、同じきつさで大きな負荷をかけられることと、持ち上げる力も損をせずに伸ばせることの2つです。筋肉が倍の速さで大きくなる近道ではありません。見た目が変わるほど筋肉をつけたいなら、下ろし方を丁寧にしたうえで、週のセット数も確保します(目安は週何セットやればいいかの記事)。ゆっくりにするのは下ろす局面だけで十分で、3〜5秒が目安。10秒を超えるほど遅くする必要はありません。
慣れないうちは筋肉痛に注意|始めの2週間
慣れない下ろす動きは筋肉痛を起こしやすく、痛みは運動の1〜3日後にピークを迎えますが、一度経験した動きなら、その後は数週間から数か月にわたって痛みが出にくくなります。
ラクに感じる動きほど、やりすぎに気づきにくいものです。先ほどの自転車型マシンの研究でも、1回目の押しとどめる運動のあとは、ふつうにこいだあとより強い筋肉痛と力の低下が出ました。ところが2週間後に同じ運動をすると、筋肉痛は出ませんでした。体が1回で慣れたのです。
始めの2週間は、次の3つを守ると安心です。
- 回数は少なめに|いきなり10回×4種目にせず、半分の5回から
- 浅く、軽く|椅子は高め、壁腕立ては壁の近くから
- 腕より脚から|脚は階段や座る動作で下ろす動きに慣れているぶん、腕より筋肉痛が出にくい
痛みが出なくなっても、効き目が落ちたわけではありません(筋肉痛が来なくても効いている理由の記事)。
RESISTでの考え方:きつさより、下ろし方を設計する
自分ひとりで始める場合、ジムの場所と器具は借りられても、何を何秒で何回やり、いつ難しくするかという設計は、すべて自分に残ります。
RESISTでは、効き方を「どれだけきつかったか」で測りません。見るのは、その人のその日の体に合った量かどうかです。エキセントリックは自分ひとりでも始められますが、下ろす動きには、自己判断が外れやすい場面が3つあります。
- 重く下ろすには補助が要る|持ち上げられない重さを下ろすには、上げる局面を誰かが手伝う必要があります(上級者向けの追い込み方はやめどきの記事で紹介しています)
- ラクなぶん量を誤りやすい|筋肉痛の出やすさは、種目や部位、年齢で違います
- 注意力を使う|ゆっくり下ろす局面は、持ち上げるより集中が必要とされます。秒数を数え、フォームを見てくれる人がいると、下ろすことだけに集中できます
マシンピラティスも、この考え方と相性のいい運動です。ばねに逆らって押し出した台を、ばねに引き戻されながらゆっくり元の位置へ戻す。戻す局面を急がないことが、ピラティスの基本のひとつです。
「1日3秒」の研究が示したのは、少ない量でも回数を重ねることの強さでした。RESISTの通い放題会員の平均来店頻度は週4.6回で、1回30分から、手ぶらで通えます。ヘトヘトになる1回より、ちょうどいい30分を何度も重ねる。研究の結果は、その通い方とよく合っています。
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まとめ:頑張る量より、下ろす速さを変える
- 重りや体を下ろす局面(エキセントリック)は、同じ筋肉でも大きな力を出せて、息が上がりにくい
- 全力で下ろす3秒でも、週5日なら4週間で力は約13%伸びた。週2日なら1回に5回
- 家なら1日5分。4つの動作を5秒かけて下ろし、1秒で戻す
- 階段は下りを使う。上りはエスカレーターでいい
- 筋肉を大きくする近道ではないので、セット数も確保する
- 始めは少なめに。筋肉痛は一度慣れれば出にくくなる
この記事の要点をひとことで言えば、きつさを増やすより、下ろすスピードを落とすことです。筋トレの量の考え方は筋トレは週30〜60分がいちばん長生きに効くという記事に、限界まで追い込まなくていい理由はやめどきの記事にまとめています。
よくある質問(FAQ)
Q1. エキセントリックトレーニングとネガティブトレーニングは同じですか?
ほぼ同じ意味です。ジムでは、重りを下ろす局面を「ネガティブ」、持ち上げる局面を「ポジティブ」と呼ぶことがあります。ネガティブトレーニングは、補助をつけて持ち上げ、下ろす局面だけを自分で行う方法を指すことが多く、エキセントリックトレーニングはそれを含む広い呼び方です。
Q2. 毎日やってもいいですか?
自分の体重で行う軽いものなら、毎日で構いません。1日5分の研究は毎日、1日3秒の研究は週5日行っていました。筋肉痛が強い日は、その部位を休みます。重いダンベルやマシンで下ろす練習をするなら、筋肉痛のピークが過ぎるまで、同じ部位は2〜3日あけるのが無難です。
Q3. 上げるときもゆっくりのほうが効きますか?
上げる局面は、いつもどおりの速さで構いません。1回の動作にかける時間は0.5〜8秒なら筋肉のつき方は変わらず、10秒を超えるほど遅いと、かえって不利になる可能性があります。研究で使われていたのも「下ろす5秒・上げる1秒」や「下ろす3秒」でした。
Q4. 膝が痛いのですが、階段の下りはやめたほうがいいですか?
下りで膝の前が痛むなら、無理に続けないでください。まずは高めの椅子にゆっくり座る動作から始め、痛みが出ない範囲で座面を低くしていきます。急な痛みや腫れがある場合は、運動より先に整形外科の受診を優先してください。
参考文献
[1] エキセントリック運動の特徴(大きな力・少ないエネルギー)、筋損傷と繰り返し効果、健康への応用をまとめた総説(野坂和則). Journal of Sport and Health Science. 2026. (PMID: 41571183)
[2] 運動習慣のない若い人が、腕を3秒間「下ろす」「持ち上げる」「止める」のいずれかを1日1回・週5日・4週間行い、筋力と筋肉の厚みを比べた研究. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports. 2022. (PMID: 35104387)
[3] 1日1回3秒の「下ろす」運動を、週2日と週3日に減らしたときの筋力の変化を調べた研究. European Journal of Applied Physiology. 2024. (PMID: 37505230)
[4] 週2日の練習で、1回に5回または15回「下ろす」運動を行ったときの筋力と筋肉の厚みを調べた研究. European Journal of Applied Physiology. 2026. (PMID: 41108382)
[5] 運動習慣のない32〜69歳の22人が、自宅で1日5分・4週間、4つの自重の「下ろす」運動を行った研究(Kirkら). European Journal of Applied Physiology. 2025. (PMID: 40131475)
[6] 同じ1日5分のメニューを8週間に延ばし、1年後まで運動の継続を追った研究. European Journal of Applied Physiology. 2026. (PMID: 41065863)
[7] 60歳以上の肥満の女性が、階段を下りるだけ・上るだけの運動を週2回・12週間行い、健康と体力の変化を比べた研究. Medicine & Science in Sports & Exercise. 2017. (PMID: 28291022)
[8] 散歩の習慣がある54〜88歳が、歩行にランジと下り階段・下り坂を混ぜた8週間で、脚の筋力・体の機能・認知機能が変わるかを調べた研究. European Journal of Applied Physiology. 2024. (PMID: 38467835)
[9] 自転車型のマシンで、ふつうにこぐ運動と押しとどめる運動を同じ強さで行い、心拍・酸素の使用量・筋肉痛を比べた研究(2回目の筋肉痛も比較). Medicine & Science in Sports & Exercise. 2013. (PMID: 23475167)
[10] 下ろす動きと持ち上げる動きの筋肥大の効果を、15研究で比べたシステマティックレビューとメタ分析. Journal of Strength and Conditioning Research. 2017. (PMID: 28486337)
[11] 下ろす練習と持ち上げる練習の筋力・筋肉量への効果を、20のランダム化比較試験で比べたメタ分析. British Journal of Sports Medicine. 2009. (PMID: 18981046)
[12] マシンで下ろすだけ・上げるだけの練習を続けたときの、3種類の筋力の伸びを27研究で比べたメタ分析. Sports Medicine - Open. 2025. (PMID: 40839186)
[13] 高齢者で、下ろす動きを中心にした筋トレと通常の筋トレを、11のランダム化比較試験で比べたメタ分析. Ageing Research Reviews. 2026. (PMID: 41192799)
[14] 1回の動作にかける時間(テンポ)と筋肥大の関係を、8研究で調べたメタ分析. Sports Medicine. 2015. (PMID: 25601394)
[15] 器具を使わない筋トレを、下ろす動き中心と持ち上げる動き中心に分けて8週間行い、高齢者の筋力と体の機能を比べた研究. European Journal of Applied Physiology. 2019. (PMID: 31055678)
[16] Put those weights down! How 'eccentric' exercise opens up a whole new world of fitness. The Guardian. 2026年5月4日.(theguardian.com)