膝の痛みは、40代の女性から増えていく
「膝の痛みなんて、まだ早い」と感じるかもしれません。でも、データはそうは言いません。
日本の大規模な疫学調査「ROADスタディ」の推計では、レントゲンで変形性膝関節症と判定される人は、国内で約2,530万人。その内訳は、女性が約1,670万人、男性が約860万人で、女性は男性のおよそ2倍にのぼります(厚生労働科学研究・吉村ほか)。

※ レントゲン上で変形性膝関節症と判定される人の国内推計患者数。女性約1,670万人に対し男性約860万人で、女性が約2倍多い。出典: ROADスタディ(吉村典子ほか、PMID: 21628795)
なぜ女性に多いのか。理由は一つではありませんが、もともとの筋肉量が男性より少ないこと、閉経前後の女性ホルモンの変化、そして加齢による太ももの筋力低下が重なることが大きいと考えられています。つまり、膝そのものが弱いというより、膝を支える力が落ちやすい。だからこそ、40代から手を打つ意味があるのです。
「動かすと悪化する」は、逆だった
膝が痛むと、人は自然と動きを減らします。これはある意味で当然の防御反応ですが、変形性膝関節症に関しては、この直感が裏目に出ます。
膝の変形性関節症に対する運動療法の効果を調べた研究は、世界中で数多く行われてきました。それらを統合した質の高いレビューがあります。44の臨床試験(3,537人)をまとめた解析では、運動療法によって膝の痛みが、100点満点でおよそ12点分やわらいだと報告されています。動きやすさ(身体機能)も、同じく改善していました(Cochrane Database of Systematic Reviews, 2015)。

※ 膝の変形性関節症に対する運動療法の効果。痛み(0=痛みなし〜100)は、運動しない対照群で約44点だったのに対し、運動療法群では約12点分低い水準まで軽減した。出典: Cochrane Database Syst Rev, 2015(PMID: 25569281)
薬に頼らず、これだけ痛みが変わる。決して小さな効果ではありません。しかも運動には、痛みを抑えるだけでなく、関節を支える力を高め、体重をコントロールし、気分まで上向かせるという「副作用のない上乗せ」があります。だからこそ、変形性膝関節症の国際ガイドラインは、運動療法を中心的な非薬物治療として推奨しているのです。
逆に、痛みを理由に動かないと、下の悪循環に入ります。
| 段階 | 起きること |
|---|
| ① 膝が痛む | かばって動きを減らす |
| ② 動かさない | 太ももの筋肉が落ちる |
| ③ 筋力が落ちる | 膝を支えきれず、関節への負担が増える |
| ④ さらに痛む | ①に戻り、悪循環が加速する |
この輪をどこかで断ち切る鍵が、「正しく動かす」ことなのです。
鍵は、太ももの前の筋肉
では、何を鍛えればいいのか。膝を守るうえで最も重要なのが、太ももの前側の筋肉「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」です。
大腿四頭筋は、膝を伸ばし、着地の衝撃を受け止め、関節を安定させる、いわば膝の「天然のサポーター」です。この筋肉が弱ると、膝はぐらつき、軟骨や関節にかかる負担が増えます。実際、太ももの筋力が弱いことは、膝の痛みや動きにくさと関連することが知られています。裏を返せば、ここを鍛えることが、最も直接的な膝の保護になります。
ただし、ここで大事な注意があります。痛む膝に対する運動は、自己流でやると逆に悪化させることがあります。 強度が強すぎれば関節を痛め、フォームが崩れれば負担が偏る。効かせるべき筋肉に、痛みを避けながら、適切な強度で効かせる。このさじ加減こそが、専門家の管理が要るところです。膝に負担の少ない運動(椅子に座って行う脚の運動、水平的な動き、体重を管理したうえでの段階的な負荷)から始め、痛みと相談しながら少しずつ強度を上げていくのが基本です。
40代からできる、膝を守る運動の始め方
「膝が痛いのに運動なんて」とためらう気持ちは、よく分かります。だからこそ、独りでやみくもに始めるのではなく、痛みの状態に合わせて設計するのが安全で、続きます。
RESIST北浦和店は、完全個室・マンツーマンで、一人ひとりの膝の状態や痛みに合わせて強度を設計できる環境です。太ももの筋肉を痛みなく鍛えるトレーニングに加え、マシンピラティスで股関節や体幹の使い方を整えると、膝への偏った負担そのものを減らせます。膝の痛みは「膝だけ」の問題ではなく、股関節・お尻・足首を含めた脚全体の使い方の結果でもあるからです。
膝は、ただすり減るのを待つだけの関節ではありません。支える力を取り戻せば、痛みは和らぎ、動ける範囲は広がります。まだ日常生活が送れている40代のうちに手を打てば、その効果はより大きくなります。「もう歳だから」とあきらめる前に、まず膝を支える力を育てる。それが、10年後も自分の足で歩き続けるための、いちばん確かな一歩です。
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関節の痛みと「時期で変わる正解」の考え方は五十肩と運動の記事でも整理しています。骨の強さが気になる方は骨密度と筋トレの記事もどうぞ。
よくある質問(FAQ)
Q1. 膝が痛いのに運動して、悪化しませんか?
適切な強度で行えば、多くの場合、運動はむしろ痛みをやわらげます。質の高い研究をまとめた解析でも、運動療法は膝の痛みを軽減し、動きやすさを改善すると示されています。大切なのは「痛みを我慢して無理に動かす」ことではなく、「痛みを避けられる範囲で、膝を支える筋肉を育てる」こと。強い痛みや腫れがあるときは無理をせず、専門家の管理のもとで、負担の少ない運動から段階的に始めるのが安全です。
Q2. ウォーキングだけでは、膝の痛みには効きませんか?
ウォーキングにも良い面はありますが、それだけでは膝を支える筋肉を十分に強くしにくいのが実際です。膝を守る主役は、太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)を意識して鍛えるトレーニングです。歩くこと自体は続けつつ、それに加えて筋力トレーニングを組み合わせると、膝の安定性が高まり、痛みの予防・改善につながりやすくなります。歩数を増やすより、支える力を足すイメージです。
Q3. どのくらいで痛みは楽になりますか?
個人差が大きいものの、運動療法の効果は数週間から数か月かけて現れることが多いです。研究でも、効果は運動を続けている間に得られ、やめると薄れやすいことが示されています。つまり、膝を守る運動は「一度やって終わり」ではなく、歯みがきのように続ける習慣にすることが大切です。焦らず、痛みの変化を見ながら強度を調整していきましょう。継続できる仕組みづくりは、RESISTが最も得意とするところです。
Q4. 強い痛みや水がたまっている場合も、運動していいですか?
いいえ、その場合はまず医療機関の受診を優先してください。この記事が対象にしているのは、日常生活は送れるけれど膝に不安や軽い痛みがある段階の、予防と改善です。強い痛み、はっきりした腫れや水がたまる、膝が動かしにくいといった症状があるときは、自己判断で運動する前に、整形外科での診断を受けましょう。診断のうえで運動が可能とされたら、専門家の管理のもとで安全に進めるのが正解です。
参考文献
[1] Fransen M, McConnell S, et al. Exercise for osteoarthritis of the knee. Cochrane Database of Systematic Reviews. 2015. (PMID: 25569281)
[2] Yoshimura N. [Epidemiology of osteoarthritis in Japan: the ROAD study]. Clinical Calcium. 2011.(変形性膝関節症の国内推計患者数)(PMID: 21628795)
[3] 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(mhlw.go.jp)