なぜ女性は、閉経後に骨が弱くなるのか
まず、なぜ女性で骨が問題になりやすいのか。カギは女性ホルモンのエストロゲンです。
エストロゲンには、骨を壊す働き(骨吸収)を抑える役割があります。ところが閉経に伴ってエストロゲンが激減すると、この抑えが外れ、骨量が急速に減っていきます。厚生労働省のe-ヘルスネットも、「高齢女性の骨粗しょう症リスクが高いのは、閉経後に骨芽細胞を活発にする女性ホルモン『エストロゲン』が激減するため」と明記しています(e-ヘルスネット, 厚生労働省)。
つまり、閉経前後は骨にとっての分岐点。ここで何もしなければ骨は減っていく一方ですが、正しく刺激を入れれば、流れは変えられます。40代から意識する価値があるのは、このためです。
ウォーキングだけでは、骨は強くなりにくい
では、どんな刺激が骨を強くするのか。骨の研究には、はっきりした原則があります。骨を強くするには、「大きな力」を「速い速度」でかける必要があるということ。専門的には、高強度の負荷と衝撃です。
この原則からすると、ウォーキングは分が悪い。歩行でかかる負荷は体重程度で、しかもゆっくり。骨を「もっと強くしなきゃ」と反応させるには、刺激が穏やかすぎるのです。歩行は心肺や代謝、気分には素晴らしい運動ですが、骨密度を上げる刺激としては力不足。ここを勘違いすると、「毎日歩いているのに骨密度が下がった」ということが起きます。
では何が要るのか。答えは、筋トレ(レジスタンス運動)と、骨に響く衝撃です。衝撃といっても、いきなり高く飛ぶ必要はありません。たとえば「かかと落とし」(つま先立ちから、かかとをストンと下ろす)のような軽い刺激から。骨は、こうした「速く・強い」負荷に反応して強くなります。そしてそれは、骨密度がすでに低い人でも有効だと、研究が示しています(ただし強度の上げ方には注意が要ります。後ほど詳しく)。
骨密度が低い女性でも、骨は強くできる
ここで、この分野で広く知られた研究を紹介します。骨密度が低い(骨減少症・骨粗しょう症の)閉経後女性101人を対象にした「LIFTMOR」というRCTです。参加者を、週2回・30分の高強度の筋トレ+衝撃運動を行うグループと、自宅での軽い運動グループに分けて、8か月追跡しました。
結果は明快でした。高強度グループでは、腰椎の骨密度が2.9%上昇。対照グループは逆に1.2%低下。大腿骨頸部(脚の付け根)でも、高強度グループが+0.3%に対し対照は−1.9%。さらに身長や、立ち上がり・背筋や脚の筋力などの機能も改善しました(Journal of Bone and Mineral Research, 2018)。

※ 骨密度の低い閉経後女性で、週2回・30分の高強度の筋トレ+衝撃運動を8か月続けた群と、自宅での軽い運動群の骨密度の変化率。高強度群は腰椎・大腿骨頸部とも骨密度が維持〜上昇し、対照群は低下した。出典: J Bone Miner Res, 2018 (LIFTMOR trial)(PMID: 28975661)
注目すべきは、対照群が「何もしなかった」のではなく「軽い運動をした」点です。それでも骨密度は下がった。軽い運動では骨の減少を止められず、高強度で初めて骨密度が上向いた。強度が、骨にとっては決定的なのです。
「高強度は危険では?」への正直な答え
「骨が弱っているのに高強度なんて、折れそうで怖い」。当然の不安です。従来、骨粗しょう症の人には高強度運動は勧めない、というのが通説でした。骨折のリスクを心配してのことです。
ここもLIFTMORの研究が答えを持っています。8か月の高強度トレーニングで、報告された有害事象はごくわずか(軽い腰の張り1件のみ)でした。研究者は「指導のもとで行えば、高強度の筋トレと衝撃運動は、骨密度の低い閉経後女性にとっても安全で効果的だった」と結論しています。
ただし、太字で強調します。これは「監視下(指導のもと)」での結果です。自己流でいきなり重い負荷やジャンプを行うのは勧めません。フォームが崩れれば、骨だけでなく関節や腰を痛めます。骨密度が低い方や、すでに骨粗しょう症と診断された方は、必ず主治医に運動の可否を確認し、専門家の指導のもとで始めてください。強度は「正しく・段階的に」上げるものです。
骨を守る運動は、転倒予防にもなる
骨を守る運動には、もう一つの効果があります。転倒そのものを防ぐこと。骨がいくら丈夫でも、転べば折れます。逆に、転ばなければ折れません。
地域で暮らす高齢者を対象にした大規模なレビュー(108のRCT・2万3千人超)では、バランス・歩行・筋力を鍛える運動が、転倒を予防することが確認されています(Cochrane Database of Systematic Reviews, 2019)。筋トレは骨密度を上げ、同時に筋力とバランスを高めて転倒を防ぐ。「骨を強くする」と「転ばない体をつくる」を同時に叶えるのが、レジスタンス運動の価値です。
北浦和で、骨を守る運動を安全に
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よくある質問(FAQ)
Q. ウォーキングを毎日していますが、骨密度が下がりました。なぜですか?
A. 骨を強くするには「大きな力を速くかける」刺激が必要で、歩行の負荷は骨を鍛えるには穏やかすぎるためです。歩行は心肺や代謝、気分には素晴らしい運動ですが、骨密度を上げる刺激としては力不足です。骨のためには、筋トレや衝撃のある運動を足す必要があります。
Q. 骨密度が低いのですが、筋トレをして骨折しませんか?
A. 指導のもとで正しく行えば、骨密度の低い閉経後女性でも安全に効果が出たという研究があります(8か月で有害事象は軽微1件のみ)。ただしこれは監視下での結果です。自己流での高強度は勧めません。骨密度が低い方は主治医に相談し、専門家の指導のもとで段階的に始めてください。
Q. 何歳から骨を守る運動を始めるべきですか?
A. 早いほど良いですが、40代から意識する価値が高いです。女性は閉経前後にエストロゲンが減り、骨量が急速に落ちやすくなります。この分岐点で正しい刺激を入れれば、流れは変えられます。すでに閉経後の方でも、高強度の運動で骨密度が上向いた研究があるので、始めるのに遅すぎることはありません。
Q. 骨のためには、どんな運動がいいですか?
A. 筋トレ(レジスタンス運動)と、ジャンプのような衝撃運動の組み合わせが効果的です。加えて、バランスや筋力を鍛える運動は転倒予防にもなり、「骨を強くする」と「転ばない」を同時に叶えます。強度が大切なので、軽い運動だけでなく、適切な負荷を専門家と設計するのがおすすめです。
参考文献